日本の商売が大量の外国人で変わる

「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」。海外の外国人労働者をめぐる論説を読んでいたら、こんな一文が目に止まった。
石井孝明 2025.06.09
誰でも

日本は移民を事実上解禁した。そして外国人の労働者が増えている。在留者も昨年12月末の時点で、約376万9000人になっている。しかし、それを呼んだ人、受け入れた人は、この言葉のように、何か勘違いをしているようだ。外国人ろうどうしゃは、労働力だけを提供するわけではない。人間として、さまざまな活動をしていく。

そして、私たちに接して、さまざまな摩擦が起きつつある。特に、私たちが日常関わる商行為で、接する機会が多くなっている。しそして中には、これまでの常識では想定できないものも多い。

大量の外国人の流入は日本経済をどのように変えるのか

大量の外国人の流入は日本経済をどのように変えるのか

◆「電気を止められたから放火」

まず考えなければならないのが、商売での安全だ。私は、エネルギー産業を中心に、日本経済を見ているが、これまでに、想像できない事件が起きた。

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25年4月4日、東京電力の甲府事務所が放火された。犯人は玄関に灯油を撒いた後に車で逃走した。幸いなことに、すぐ消し止められ、怪我人はなかった。警察が防犯カメラの映像を追跡したところ、犯人は南アルプス市で飲食店を経営するスリランカ人だった。3ヶ月前に電力料金を不払いで止められたことに腹を立てたという。

電力料金は、飲食店経営の中で大きな割合を占めるだろうが、払えないほどの負担とは思えない。日本の電力会社は顧客に優しく、なかなか電気を止めないので、この犯人はよほどおかしな行動をしたと推測できる。また会社の玄関には、今はどこにも防犯カメラがある。それなのに、すぐに特定されそうなこんな事件をするのは愚かだ。これ以上の詳細は警察からも東電からも発表されていないが、異様な行動だ。

「外国人だからこのような犯罪をした」と、差別的なことを言うつもりはない。日本人にも悪い人は当然いる。しかし一部の外国人の中には、想定できない行動をする人がいることは確かだ。そして彼ら全てが善人ではない。

◆太陽光発電の機材窃盗、盗電の懸念

その他にも、外国人による困った動きがある。日本の太陽光発電は、安易な参入が行われたので管理が各所で放置されている。それを狙われ、ここ数年、機材が盗まれる例が多い。ここ数年の銅の高騰で、特に電線となかの銅が狙われている。その実行犯、また買取をする犯人が外国人である例が多い。例えば、今年5月に茨城県警が逮捕した事案では、同国に在住するタイ人3人が発電所のケーブルを1年にわたって盗み続け、被害総額は4億円程度になったという。

全国で、建設業・解体業では、外国人労働者が目立つようになった。また外国人の運転免許の緩和でトラックに乗るようになっている。SNSで多くの日本人がその問題行為を見付け、公表している。危険な運転ばかりだ。そこで彼らの運転するトラックには多くの場合に、缶から車のタンクに液体を入れる石油ポンプが備えられているとの指摘がある。

灯油と軽油はほぼ成分が一緒で、灯油を使い軽油を燃料とするディーゼルエンジンを使うトラックは動かせる。灯油は軽油より税金が安い。しかし、それを続けるとエンジンの故障は多く、排気ガスも多くなる。かつての日本では、業界団体と警察の努力でそうした灯油のディーゼルの使用は減った。それを外国人がやっているらしい。

◆「外国人批判」と問題を怒る人々

ただし、外国人を批判し、事実を指摘すると、配慮が不足すると、人権問題として批判されかねない。一例を示してみよう。埼玉県南部には、トルコ国籍のクルド人が集住し、彼らが違法行為、迷惑行為で地元住民とトラブルとなっている。メディアはほとんど報道しないが、SNS主導で社会に知られて注目を集めている。

その埼玉県南部で24年秋から大規模停電が何度か起きた。私はトルコでクルド人の集住地域で「盗電」が問題になっているとの情報を、トルコのメディアを紹介する形で伝えた。

在日クルド人の出身地であるトルコ南部では電力が送電線から盗まれ、中には配電の半分が課金できない市町村がある。住民は、電力会社の電線に自分用の電線を繋いでしまう。その電線を切断する、料金を徴収しようとすると、暴力的に電力会社の社員が追い払われ、地方の治安を担当する国家憲兵隊が出動するなどの事件が多発していると言う。

盗電は日本以外の国では珍しいことではない。しかしそのためにトルコでは、電力会社の収益が低下し、一部地域の電力供給が不安定になっている。これは外国人が増える中で、日本の電力会社も念頭に置いていい話だろう。大規模な盗電など日本で聞いたことはない。新しい犯罪が

このジャーナリストはXの投稿でこの事実を紹介した後で、「まさか日本でね。もしかしたらこの停電も」と、余計な言葉を付け加えてしまった。すると、クルド人の擁護をする日本人、またカタコトの日本語を話すクルド人が「差別だ」「ヘイト(特定人種への憎悪)だ」と批判し、炎上しそうになった。するとクルド人を批判する一般人が、このジャーナリストを擁護する、またはトルコの現状を紹介して、批判を批判した。SNS上で相互のグループで罵り合いが広がってしまった。少し反省している。

◆政治紛争にエネルギー産業が巻き込まれる懸念

外国人問題のように、人権などがからむ政治問題は、政治的論争を生みやすく、批判が先鋭化する。そこに関わる企業にとってはリスクだ。人権問題などで会社が大きく批判されれば、会社のイメージ、収益にも影響が出かねない。私は配慮不足の発言を個人の責任で引き受ければいいが、個人の炎上と企業の炎上は損害が違う。事実を言ったとしても、一部の政治勢力や政治信条を持つ人から攻撃されるリスクを、企業は配慮しなければならないだろう。

当然、外国人差別などは許されないし、そんな考えを持つ社員がいる会社は日本でほぼないだろう。それどころか日本は外国人に良く言えば「優しい」、悪く言えば「お人好し」の人ばかりだ。しかし、当然、外国人には悪い人もいる。外国人全体の数が増えれば、その悪い人の数も増える。そして欧米では移民による犯罪、また治安の悪化が社会問題になっている。日本にもその兆しがある。

企業経営の中で、当然、その事実を直視しなければならない。不払いの問題、そして従業員の問題、言葉と習慣などの違う外国人の接客などの問題だ。しかし各社とも、多言語パンフレットの準備程度にとどまり、っているようだ。

◆購買層として、労働者として外国人に向き合う

一方で、外国人労働者の増加は、暗い側面ばかりではない。新しいビジネスの可能性も増える。日本に新しく流入する外国人労働者は、勤労世代の若い男が中心だ。当然購買意欲も高い。インフラ企業では、NTTがこうした外国人ビジネスに積極的だった。外国人は必ず本国に連絡をする。ネットのない時代の電話、さらに2000年代までは、その回線販売、その後は携帯販売を積極的に行なった。

またさまざまの場面で、人手が不足気味だ。筆者は少子高齢化、地方の衰退の中で、インフラや経済活動を縮小・集約するまとめる動きが合理的であると思う。しかし、日本の社会、そして政治は、そうした切り捨てを嫌がる。したがって、全ての地域でサービスを提供することを社会が企業に求め続けることになろう。「おもてなし」に代表される日本の行業文化は誇るべきものである反面、企業に無駄なコストを負担させる。そのために日本の労働生産性はだから、先進国中で常に低いのだろう。外国人は、その経済維持のために、働いていただく必要が増える。

日本政府は「移民政策はとらない」としながら、外国人の大量受け入れ政策に転換している。今後、政治的には論争をはらみながら、この問題は大きくなっていくと思われる。私たちの身の回りで、大量に増える外国人との付き合い方を考えるべき時が来ている。私は、できる限り日本人を中心に経済を回すべきとの考えだ。しかし、それが無理なら、早め早めの対応が必要だ。

石井孝明

経済記者 、with ENERGY、Journal of Protect Japan 運営

ツイッター:@ishiitakaaki

メール:ishii.takaaki1@gmail.com

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