順調な出発、国内初の原子力リサイクル燃料貯蔵施設-青森
施設完成で原子力発電の継続的運用が可能に

(写真1)施設の全体像(RFS提供)
この施設は、原子力発電所の敷地の外に初めて作られた使用済み原子力燃料の置き場で、「中間貯蔵施設」とも呼ばれる。原子力施設が集まる青森県下北半島の北部にある。RFSは東京電力ホールディングス(HD)、日本原電が出資し、これら2社の使用済み燃料の保管が事業の目的だ。昨年9月に東電の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)から初の使用済み燃料が搬入され、昨年11月から保管が開始された。
原子力では、2011年の福島原子力事故の後で新しい重要施設の稼働はなかった。このリサイクル燃料貯蔵施設は、新規制基準の施行後に初めて運用が開始される新施設だ。原子力燃料サイクル(核燃料サイクル)の一翼を担い、そして事業者の原子力発電の運用をより柔軟にし、持続可能な運用を実現する重要な意味を持つ。
原子力発電で発生した使用済み燃料はこれまで、原子力発電所内の貯蔵プールや敷地内の施設の金属キャスク(容器)で乾式保管されてきた。各発電所の規模や設備、運転状況などで違いはあるものの、その保管可能な量には限界がある。このRFSの施設は、原子力発電の施設外でそうした燃料を大規模に保管する初の施設となる。
東電HDと日本原電は、原子力発電を今後運営する際に、使用済み燃料の保管場所に余裕ができた。今後は貯蔵場所にとらわれずに、原子力発電所の運営が柔軟に行えるようになる。
さらにこのRFSの施設での安全な運営の実績、また技術や経験の蓄積は、各電力会社がこうした保管施設を作る場合にも役立つ。
巨大な設備、徹底した安全対策
現場を見て感じたのは、安全への深い配慮だ。使用済み原子燃料は、堅牢な建物の中にある。施設では、放射線が厳重にモニタリングされている。建物の中に入った私も放射線の被曝は、当然ゼロだった。安全保持のために書くことを自粛するが、厳重な警備体制の上で入構が管理されていた。
経済・環境記者の石井孝明が、移民・外国人労働者、エネルギー、金融・マーケットを中心に取材した情報を深掘りの解説をつけてお届けします。サポートメンバーのご支援のおかげで多くの記事を無料で公開できています。品質や頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。
RFSの施設は、横62メートル、縦131メートル、高さ28メートルの分厚い鉄筋コンクリート製の建物だ。ここに国の許可の上ではウラン3000トン分の貯蔵が可能だ。またキャスクは288基設置できる設計になっている。さらにウラン2000トン分の使用済み原子力燃料を貯蔵する、2棟目の建設も予定されている。